UEFAネーションズリーグ #2 クロップ監督

クロップ監督とネーションズリーグ

一つ前の記事でも書きましたが、私はネーションリーグを、めちゃくちゃ楽しんで見ています。それはもうW杯のようなテンションで。で、そんなUEFAネーションズリーグですけども、日本語で検索すると、なんと、あのリヴァプールユルゲン・クロップ監督が「無意味な大会」だと言ったという記事が出てきて。それも一つじゃなく。

そういう記事を読んで、私は「クロップさん、なんだよー、けっこう好きだったのに、そんなこと言わないでよー。意外にも面白いんだよ、ネーションズリーグはー。」って思っちゃったんですよ。でも、実際に、クロップが、ネーションズリーグについて話している映像を見たら、全く印象が変わりました。本人の言葉をちゃんと聞かずに、勝手に誤解して、彼に怒ってた自分が申し訳なくなった。ですので、私みたいな人が万一いらっしゃったときのために、彼の言っていたことを私なりに訳してみました。

ネーションズリーグについて #1

まずですね、ネーションズリーグが「無意味」だと言ったという日本語の記事は、この会見↓で言ったことを基にしているんです。この会見は、10月8日のリヴァプールVSマンチェスター・シティの試合後に行われたものです。一応訳しましたけど、私の訳は主観入ってますので、自分の目と耳で聞いたほうが確かですんで。言葉の温度とか発言した時の雰囲気なんかも分かるし。7:00ぐらいからです。

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「これから、僕の選手たちは、残念ながら、またここから出て行って、闘わないといけないんだ、ネーションズカップの試合、フットボールの世界で最も「意味がない」大会を…それで…(記者笑う)ね?それで、まぁ、とにかく、彼らが怪我をせずに戻ってきて、この「簡単な」プレミアリーグチャンピオンズリーグと、あとFAカップを闘ってくれることを願うだけ。大変だよ、選手たちは。」

*次に行く前にちょっとここで間があるっていうか、「えっと、でも…」って口ごもるんです。やべーこと言っちまったかなって思ったんだと思うんですけど、私は。

「以前にも、インタビューで言っただろ?僕たちは、選手たちのことをもっと考え始めなきゃいけないって。チームにインテンシティが欠けていたって批判するけど、インテンシティが高いゲームを見たかったら、夏休み明けの選手たちを見に来てくれってことさ。この夏、ジョーダン・ヘンダーソン*1なんて、2週間しか休みがなかったんだよ?はは、笑えるね。そういうことを言いたいだけなんだ。別に、選手が代表合宿に行くことは、大きな問題じゃないんだよ。でも、もしも僕が『○○と○○を次のゲームでは休ませてくれないか?』ってナショナルチームの監督に電話したら、どこの国の監督だって『いや、こっちだって(勝たなきゃいけないっていう)プレッシャーがあるんだ。ネーションズカップの試合だから。(だから、休ませることはできないよ)』って言うだろう。ネーションズカップがどういう大会かよく知らないんだけど、来年の夏に決勝トーナメントがあるんだろ?(言いたかったのは)それだけさ。(記者笑う)」

ネーションズリーグについて #2

…で、後日、↑の発言の反響が大きかったからなのか、何なのか、さらにネーションズリーグについて熱く語ったんだけど、それが↓です。これって訳してる日本のメディアありますか?私は見つけられなかったんだけど。再度言いますが、私の訳は、主観が入っていますし、途中ちょこっと抜かしているところもあるんで、ぜひ、自分の目で耳で、聞いてみてください。言葉のトーンとかも分かるし。7:20~です。10月19日のプレスカンファレンスで、記者に聞かれたわけでもないのに、自分から勝手に話し出してます。約2分間の大演説w。

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「(記者に対して)君、ネーションズリーグに対する僕のコメントについて、いろいろ書いてたと思うんだけど。いろんな人がいろんな意見を言っていたね。実力が拮抗している者同士の真剣勝負が見られて、ただの親善試合よりいいじゃないかとか。確かによさそうだ。でも、僕が言ってるのは、まさにそこだよ。僕は、それが(選手たちにとって)過酷すぎると言ってるんだ。彼らが言っているのは、ボクサーのアンソニー・ジョシュア*2が闘っているのを二日に一回見たいって言ってるようなもんだよ。でもそんなの無理だろ?無理だから、彼に対して、誰もそんなことを期待しないじゃないか。

フットボールだけだよ、こんなのは。アメフトの夏休みなんて、僕たちのシーズンより長いんだよ!? いやまぁそこまでは長くないけど、要は、他のスポーツは、ちゃんと、必要な分だけ、選手たちが休めるようになっているじゃないかってことさ。バスケットボールもだ。それなのにフットボールだけ、そうじゃない。なぜなら、フットボールでは、誰もが、大きな大会にしか興味を示さないからだよ。昇進したり降格したり。この間のウェールズVSアイルランド戦だってそうさ。選手たちは何かを背負って闘うことを求められていたし、スタジアムの空気も独特だったじゃないか。

だから、どっかのタイミングで考えなきゃいけないんだよ。僕たち、毎日オペラを見たいのか?って。2か月に一度で十分じゃないか?って。僕は、それが言いたかっただけなんだ。僕も大きな大会は好きさ。もちろん。でも、誰かがどっかのタイミングで立ち止まって考えないと(重要な試合ばかりが続く状況について)。

(選手たちがどれだけ過密日程でプレーしていても)試合を見ていて、選手のパフォーマンスが悪いとみんな腹を立てるだろ?でも、そうだとしたら、考えなきゃいけないのは、僕たちは、どうやったら、選手が最高のパフォーマンスができる状況を確保できるのかってこと。そう言ってるだけだよ、僕は。

ネーションズリーグ自体は、とてもいいアイディアだよ。だから、他のスポーツでやったらいいんじゃないですかってこと。(ただでさえ過密日程のサッカーに)ネーションズリーグの入る隙間は、もうないんだよ。

…でも、正直ちょっと前から気づいてたんだけど、これは、ここじゃなくて、コーヒーメーカー相手にでもぶつぶつ言っておくべきことだったね。みんな、興味なさそうだしさ。(記者たち笑う)でも、僕の意見だから。変えられないんだよ。

今のフットボールは、ハイライト、ハイライト、ハイライト。重要な試合ばかりで、選手はいつ休めるんだってことさ。それだけ。僕は、それが言いたかっただけ。でも、みんながそれでハッピーなら、このままでいようじゃないか。」

だって。っていうか、クロップさん、おもしろすぎるんだけどw。大好き、この人。彼のコメントを聞いていると、いつも選手やサポーターのことを一番に考えてるのが伝わってくるんですよー。最初に「意味がない」大会だと言ったのも、彼が選手たちの心と体を心から心配しているからだと思うんです。そんなに身を削らなくてもいいんだよって。負担を背負わなくてもいいんだよって。みんな興味ないのわかってるけど、俺の意見を言わせてくれ的な姿勢も好き。私はリヴァプールのサポーターじゃないけど、こういう人に率いられているチームは、とてもいいチームなんだろうと思います。あ、デシャンもクロップと同じくらい最高の指導者だと思ってますよ?(聞いてないって?)。選手やサポーターを心から気遣える監督は、どの監督だってすてきだと思う。

まとめ

彼が実際に話している映像を見て、あーそうか、クロップさんは、ただ単純にネーションズリーグを「意味がない大会だ」と否定したんじゃない。「魅力がない大会だ」と言ったわけじゃない。魅力がある大会なのは分かっているけど「ただでさえ過密日程なのに、ネーションズリーグまで闘わないといけないのは、選手にとって過酷すぎるから、考え直した方がいい」と言ったんだと分かりました。そこには、確かな「選手を思う気持ち」があったんだなって。っていうか、それしかなかったんだなって。それなのに、誤解してた、ごめんなさい。

ひとりごと

ポール・ポグバに関する記事の多くもそうだけど、実際に彼が話している映像を見ると、全然違う印象を持ったりします。あー、誤解してたわって。残念ながら、多くの記事で、彼が言ったことは曲解して伝えられています。ポグバにしてもクロップにしても、言葉が記事に載った時点で、SNSにあげられた時点で、他の言語に訳された時点で、誰かの主観が入ってしまっているんだと思う。そして、それは、実際にその発言をした人の本意とはかけ離れていることも多いんだと思うんです。今はSNSで抜粋した日本語訳とかが簡単に目に入っちゃうけど、それって誤解の元にもなりかねないなって。だから私は、なるべく元の言葉をちゃんと聞こうと思っています。私、英語にしろフランス語にしろ韓国語にしろ中国語にしろアラビア語にしろ、外国語を学ぶ一番の意味は、そこにあると思うんですよね。

フランス語を勉強したら、レ・ブルーの選手の言葉を、韓国語を勉強したら、BTSの言葉を、英語を勉強したら、世界中の多くの人の言葉を、誤解せずに理解することができる。そして、そこから学べることがたくさんある。理解できる範囲、学べる範囲が広がるっていうか。行きたい大学に合格したいから、旅行先での会話に困りたくないから、就職時にプラスだから、それも立派な外国語を学ぶ理由の一つだとは思うけど、それだけじゃないんじゃないかなって思うんです、私は。

あ、これは完全にコーヒーメーカー相手に言っておくべきことだったわw。すみません。ってか、クロップさんは普段、溜まりに溜まった鬱憤、でもだーれも聞いてくれなさそうな鬱憤を、コーヒーメーカー相手にぶつぶつ言って、解消してるんだね、きっと。その光景を思い浮かべると、笑えるんだけどw。毎朝毎朝鬱憤をぶつけられる、コーヒーメーカーのストレスたるや、相当なもんですよ、きっと。同情するw。私は壁に向かって言います、日ごろの鬱憤は。ごめんね、壁。

↑のクロップさんの2分間の大演説ですけど、ESPNのこの記事の書き起こしが、ほぼほぼ正確です*3。文字で読みたい方はこちらで。